【論題分析】HPDU連盟杯全国大会2020
こんばんは。新型コロナウイルスの影響で、文化祭が延期になったせいでなかなか引退できなくなってしまったUnderBridgeです。
僕の身の上話はどうでもいいのですが、とにかく1日も早くこの騒動が収束してくれることを祈ります…
さて、約1週間が経過し、いい感じに記憶が薄れてきた頃なのですが、HPDU連盟杯全国大会の論題分析を書いてみようと思います。そろそろアカデの方の記事も書いてみたいのですが、そちらは更に記憶が薄れているので…()
ただし、今回は想定以上に難易度が高かった(実は神奈川県大会の方が難しい…?とか思ったりもしていますが)ので、自分の書いていることが正しい、という自信はあまりありません。
ですので、他の高校生の方などが同様のものを書いて下さることを強く望みます。僕の視点(正確にはうちのチームの視点)のみになってしまうとあまり良くないと思うので。是非(おそらく延長しそうな)休校期間を活用してもらえればと思います。
分析に入る前に、今回、自分たちがプレパでどのような戦略(というほど凄いものでもないですが…)を参考まで示しておきたいと思います。
【プレパの時間配分】
0分~3分30秒:個人で考える(論題解釈を確認する必要があればする)
3分30秒~10分:意見の共有/すり合わせ、1st Speaker(PM/LO)が言うべきことを決める
10分~17分:2nd/Reply&WhipでClashの想定、2nd(DPM/DLO)が言うべきことを決める(※1st Speakerはひたすら原稿作成、残りの人で思いついたAnalysis/Illustration等があれば渡す)
17分~20分:各自作業(原稿作成など)
今回、僕たちは各自の家から参加したので、17分以降はテキスト上でやり取りするしかなかったため、できる限りこの時間通りになるようにしました。本当はもっとClash詰めたりしたいですけど、まあ仕方ないです…。
この方法でやるメリットとしては、1stが十分に立論を書くことができるという点かと思います。立論がしっかりしていないと、いくら反論が強くても意味がないですし…
ただその代わり、このプレパを成立させるには、1st以外の人がしっかりアイデアを出すことが必要です。今回のチームでは幸いその点は心配なかったのですが(毎度2nd/ReplyとWhipの間で白熱した議論を繰り広げていたので(笑))、この辺りは各自の得手不得手を見て調整した方が良いと思います。
いずれにしても、1stがきっちり原稿を書けないことにはディベート自体が成立しないので、その点は是非配慮しながら考えてもらえれば良いと思います!
前置きが長くなりましたが、本題に入ります!
(※難易度の評価は主観です)
【Round 1】難易度:★★★★☆
THW abolish the Olympic Games.(本院は、オリンピックを廃止する。)
(Opp.:Lose)
タイムリー…かもしれませんが、「東京五輪」を中止するという旨の論題ではありません。
ちなみに、今年のWUDC(World Universities Debating Championship:大学生の英語ディベート世界大会)のRound 4(WUDCの予選は全9試合)で出された論題でもあります。
両サイドともに、難しいのは「なぜ五輪なのか」というところだと思います。というのも、五輪を廃止したとしてもW杯や世界選手権は残るからです。
Gov.側の方針として「スポーツの大会は全て廃止!」みたいにすることも出来なくはないですが、これを示すのは相当難しいと思います。
パラリンピックに関しては、五輪と一緒に廃止、と考えた方が妥当なのでしょうか…?微妙に理念が違ったりするので、何とも言えないところではありますが…。まあ、少なくともパラリンピックは1972年以降に関しては、五輪開催直後に実施していますし、五輪開催に対するデメリットはパラリンピックにも関係してくるとは思います(参考までに、パラリンピックに関するリンクを掲載しておきます)。
ではGov.側から行きます。
まあ、一番簡単に思いつきそうなのは「お金が無駄!」みたいな話ですね。東京五輪でもかなり開催費用が膨れ上がり(7000億円→3兆円)、問題になっていたのは記憶に新しいと思います。
このお金が本当に必要な人に回らない、みたいな話をしても良いのですが、「開催したら儲かる!」みたいなことを言われてしまうと、廃止前後でどのような差があるのかを示すのが若干難しい気がします…が、十分伝わる気はします。
また、もっと具体的に「やばそう」というイメージを想起させるには、リオデジャネイロ五輪の話を使うと良いと思います。
開催するにあたってお金以外の問題を具体的に上げるとすれば、「強制立ち退き」の話かと思います(東京五輪では話題になかなかならないと思いますが)。
詳細な説明は以下の記事に譲りますが、リオデジャネイロでは競技場建設やそれに伴う工事のため、スラム街に住む住民が強制的な立ち退きに遭っています。合意なく家を取り壊されるなど…悲惨な場ですね。
では、なぜこのようなことが起きてしまうのでしょうか。以下の2点から分析してみます。
①五輪の立ち位置
それは、五輪が「国力」を示す道具として使われているからでしょう。「国力」という概念も曖昧ではありますが、招致国の威信をかけて行われるものだから、という風にかみ砕いておきます。
五輪の成功のため、政府はあらゆる手段を尽くす…はずです。一般に、その政府を支持しているのは五輪のことを楽しみ、と待つことができる中流階級以上の人でしょう(over-simplifyしているとは思いますが、便宜のためにこのように説明させて下さい)。そこで、少数派であり、発言力の弱い貧困層を搾取し、その人権を無視したような政策が取られる訳です。
ここから先は発展途上国に限定された話になるかもしれませんが、安定した生活を求めて中心都市(特に首都)には人口が過剰に流入する傾向があります(東京も同じと言われれば同じですが、状況の深刻さは異なります)。そのため、地価が上昇し、安全な住居を購入できない貧困層はスラムを形成します。オリンピックでは、もちろん首都周辺は会場になるでしょうから、新たな競技場の建設のために住処を追われる、というケースもあるはずです。
②五輪の性質
W杯や世界選手権と異なり、五輪ではたくさんの競技が一度に開催されます。そのため、それまで盛んでなかったスポーツの試合を開催するために新たに競技会場を設営するなど、手間が段違いに大きい…はずです(世界選手権であれば、既存の設備で開催できる場合にのみ招致するなど、新たに生じる負担を最小限にすることができます)。
また、首都以外にも競技会場は設定されるでしょうから、そこへの輸送を行うための新たな道路の建設、また各地での競技場建設…その全ての場所で、上記に示したような搾取が行われるとすれば、おぞましい話になります。
このように、五輪というもの自体が構造的に搾取を起こすものである、という風に説明できれば強いと思います。もちろん、ここまで示してきた話はかなりコンテクストを限定したものになってしまっていますが、「発展途上国は今後の地位向上のためにも開催したがる」「先進国であってもスラム街は存在しており、搾取に遭っている」という風に補足することはできるかと思います。
まあ、あとは作った競技場が無駄になる(いわゆる"white elephant"ですね)という論も立てられると思います。盛んでもないスポーツのための会場なので、維持費ばっかりかかってしょうがない…など。こちらは割愛させて下さい。
長くなりましたが、次にOpp.側について。
ここが個人的に苦戦したところなのですが、「五輪ってなんで必要なの…?」と考えてみると、意外と難しかったりします。五輪のユニークネスとは…?
是非考えた上で、以下の内容を読んでもらいたいです。
立てられるかな…?と思った論を箇条書きで挙げていきます。
・国際協力
オリンピックは「平和の祭典」と言われます。オリンピック憲章を少し読んでみると良いかもしれませんが、オリンピズムの精神としては、「相互の尊重」といったことが挙げられています。
世界選手権等は文字通り「競う」ことが目的ですから、五輪はスポーツを通じて相互理解を育む、という意味ではuniqueと言えそうです。
・スポーツ振興
W杯単体では、どうしても注目されにくいスポーツもあります(フェンシングなど…?)。
オリンピック/パラリンピックの際は、メディアも出場する選手の特集を組んだりしますし、認知度を上げるためには大きな役割を果たしています。
・Minorityの盛り上がり
自分の所属するコミュニティーの人物(ヒスパニック系など…)が活躍すると、勢いがついたりします。それまで言わば「差別」していたような人々の良さを認めたり、といったところでしょうか。実際、LGBTコミュニティーの中にはオリンピックを契機としようとしている団体もあるようです。
・経済効果
一番ベタな議論である気はしますが、漠然としてしまいがちなので立てにくい気もします。
短期的には建設業が盛んになることによって失業者が助けられる(+その間に手に入れたスキルを活用し、五輪後も安定して雇用につける)、長期的には観光業の発展(外国人向け施設の増加、五輪中のパフォーマンスによる関心の獲得)などでしょうか。
・各国の盛り上がり(?)
国民もアスリートも「4年に1度」という一大祭典に希望を持つ…とか。Enjoymentになったり(「○○の文化を知りたい!」「日本のいいところを知ってもらいたい!」など)、目標になったりする(「○○五輪でメダル取る!」「ワシは東京五輪まで生きる!」など)のではないでしょうか(雑)。
・設備の活用(あくまでGov.への対抗策程度)
都市のよって大きく異なりますが、きちんと設営した施設を活用することは可能です。
ロンドン五輪では、選手村の一部が貧困層向けに販売されるなど、特に有効的に活用されているようです。
Gov.側と比較するととんでもない雑さですが()、Gov.から提示されるharmを最小化しつつ、「長期的にみたらOpp.が…」という風な戦略で行くと良いのかもしれません。
まあ、Opp.で負けたのであまり偉そうなことは言えませんが(経済効果以外の内容をごちゃ混ぜにして使いました…)。
いずれにしても、この連盟杯のパンフレットに掲載されていたHPDUチーフジャッジの小野暢思さんのお話にもあるように、このような「ファクト」を知っておくことはなんだかんだで重要な気はします。
もちろん、論の立て方等を身につけることも重要ですが、ファクトを知ることでディベートと実社会の繋がりを感じることはできると思います。また、単純に論を立てるためのAnalysisを手に入れることもできるかもしれません。
もちろん、勉学との両立が求められる中高生が一日中BBCを見ている訳にはいかないので(笑)、ディベートが終わった後、その論題に関する事項を調べてみる(fat taxって成功したの?国会のfemale quotaってどこで導入されているの?などなど…)と良いと思います。また、時間があるときに、自分の興味のある分野について調べてみる(LGBT movementの現状って?ポピュリズムってどうなの?などなど…)のも良いと思います。
また偉そうに語ってはいますが、この部分は自分には足りていなかったと反省しているので、これを読んで下さっている皆さんには是非実践して欲しいですね…
まあ、ディベートとの付き合い方は人それぞれで良いと思うので、別にこれが絶対であるとは全く思いませんが。
【Round 2】難易度:★★★★☆
THW prohibit criminals from publishing descriptions of their crimes.(本院は、犯罪者が自らの犯罪の記述を出版することを禁止する。)
(Opp.:Win)
CJS(Criminal Justice System:刑事司法制度)に関する論題は比較的好きなので、個人的には少し盛り上がっていました(できるとは言っていない)。
Opp.だったので比較的すらすら思いついたのですが、もしGov.側だったらダメだったかもしれませんね…と考えると怖いラウンドではありました。
この話題関連で有名なのは「元少年A」でしょうか。以下の記事に概略が記載されていますので、よろしければ。
Gov.側から行きます。アクター(登場人物)別に説明した方が分かりやすいので、分けて説明します(アクター目線での損得ではなく、アクターに起こる現象ベースで分けています)。
①Victim(被害者)の視点
"description of their crimes"ということからも、被害者に関する描写がある可能性はあります(もちろん、ない場合もありますが e.g. 麻薬所持)。
この際に、「victimが再び危害を被るという話」ができます。なぜでしょうか?
被害者の名前が裁判やメディアなどを通じて明らかになる場合が多いですから、社会に知られ渡っています。Criminalが何かしら出版するとなれば、victiim本人ないしはその遺族が読まないにしても、再び記憶が蒸し返されてしまいます。
また、殺人事件を例に取れば、遺族からすれば自らの愛する人が殺される過程が赤裸々に描かれるわけですし、それが一生社会で流布されることになる訳ですから、精神的な負担は相当なものになるでしょう。
②Society(社会)の視点
真っ先に懸念されるのは模倣犯(copy-cat)でしょう。criminalが書いた本を読んだ人が感化されて、というシナリオです。
また、犯罪のglorification(美化)も挙げられると思います…が、このあたりの実例はあるのでしょうか…?(ざっと探した限りでは見つけられませんでした…)
③Criminal(犯罪者)の視点
publishするということは、お金(印税など)が入る、ということです。
ここで、crimeを使ってお金を得ること自体がunjustifyable(正当でない)、という説明をすることができるかと思います。
そもそも人の苦しみを使って利益を得る、という行為は直感的には良くないと思えるかもしれませんが、言語化して説明するのは少し難しいですね…例えるとすれば、職場での不当な搾取などでしょうか…
また、犯罪をしても問題なく生きていける(印税収入)、更には讃えられることさえある(→開き直る?)というような風潮を形成する…といった話にまで発展させることもできそうです。
また、視点を広げる、という意味ではFreedom of Expression(表現の自由)が認められるべき線引き、の議論をすることもできます。
他者に明白な危害がある場合などは、制限することが認められています(e.g. hate speech(まあcontroversialではありますが…))。
次にOpp.側について。
Criminal自身の言葉を知ることで、何が良いのでしょうか?おそらく、社会でdiscourse(議論)を起こすことができる、という点かと思います。
Criminal自身が犯罪をするに至るまでの過程や背景について語ることで、「犯罪を減らすにはどうしたらよいか」という議論の材料にすることができます。extreme poverty, domestic violenceなど…それらの情報を知り、criminal自身の視点を加えることで、施策を考えることができます。
なぜ現状集められる捜査情報などでは足りないのでしょうか?
ここは、criminal自身の視点がないこと、情報の受け手が警察/検察のみであり情報が非公開となってしまうこと(ある程度の情報公開はなされていますので、必ずしも正しいとは言えませんが…)、量刑を決めるための事務的なやり取りでしかないこと…などを指摘すると良いと思います。
また、Freedom of experssion(表現の自由)の話をするとすれば、「他人に危害がない」ことを示せればOKです。もしそうであれば、規制する正当性がありませんので。
模倣犯については、「きちんとeducation受けてますよね?そんなに皆すぐ感化されますか?もし刺激が強すぎる等あれば購入規制はしますよ?」といった話、被害者の感情については、「descriptionを読まなければそこまでのダメージは負わない」といった話ができるかもしれません。
ここまで書いてきたように、個人的にはこのディベートは「被害者の感情」vs.「犯罪予防」という対立軸になりそう、と思っています。
余談レベルになりますが、上手くコンテクストを限定すれば、所謂「政治犯」に関する話もできるかと思います。
軍事政権などの抑圧的な政府の下で、反政府的な情報を流していたジャーナリストが逮捕されてしまいました…自らの正当性を示す際に使える手段が、まさにdescriptionをpublishすることです。
論題のメインのターゲットからは外れてしまう気がするので、これくらいに留めておきますが、THW grant the right to vote to prisoners.(本院は囚人に投票権を与える)といった論題にも適応できる考え方であるとは思います。
コンパクトに賛成/反対の立場の意見がコンパクトに纏まっている記事があったので、最後にご紹介します。
表現の自由を規制するようなディベートは、少しGov.側は難しい気もします…が、今回のもので言えば、victim目線の話をしっかり説明すればなんとかなりそうですかね。
折衷策として、海外では「出版」ではなく、「利益を得る」ことを禁止しているところが多いようです。
このラウンドでは、あまり多くのアクターの話をすることが出来なかったということもあり、反省を込めて細かく記載させて頂きました。
ここまではかなり筆が乗っていますが、ここから先は書く量が徐々に減っていくと思います…ご了承下さい。
(※R3以降は後日追記予定)
【Round 3】難易度:★★★★☆
THBT the state should not subsidize art.(本院は、国が芸術に助成金を与えるべきではないと信じる。)
(Gov.:Win)
【Round 4】難易度:★★★★☆
THBT feminism movement should oppose affirmative action for women.(本院は、フェミニズム運動は女性に対するアファーマティブアクション(積極的差別撤廃措置)に反対すべきだと信じる。)
(Opp.:Win)
【Quarter Final】難易度:★★★★☆
THBT humanitarian aid does more harm than good to active conflict zones.(本院は、紛争が活発な地域への人道的支援は益よりも害をもたらすと信じる。)
(Gov.:Lose (0-3))
【Semi Final】難易度:★★★★☆
THW prohibit corporations from sponsoring academic research.(本院は、企業が学問的研究を支援することを禁止する。)
【Grand Final】難易度:★★★★☆
THW ban private property.(本院は、私有財産を廃止する。)